コロナ禍による在宅ワークへの切り替えは、僕の生活に思いがけない朝の時間をもたらした。
それまでは、妻とは完全なすれ違い生活。寝ぼけ眼で適当に飯を詰め込み、シャワーを浴びて会社へ駆け込む。午前様で帰宅しては泥のように眠る。そんな殺伐としたルーチンが、静かな食卓を囲む穏やかな朝に一変したのだ。
青雲が流れてきた朝
そんなある日の朝食中。めざましテレビから突如、聞き慣れたあのメロディが流れてきた。
「青雲〜、それは〜♪」
どこか懐かしく、そして場違いなほどの哀愁。それが『ちいかわ』のアニメだと知った時の衝撃は忘れられない。「なんで?ちいかわで青雲?w」という疑問と、当時CMで歌っていた歌手の声そのままというシュールさ。
ちいかわ自体の存在は、エルデンリングの武器(屍山血河)のMAD動画なんかで薄らとは知っていた。けれど、その正体がこんなにもカオスで、かつ深淵な世界だとは夢にも思わなかった。
うさぎが可愛い
気づけば、Amazon Prime Videoでアニメを見返していた。
そして、運命の出会いを果たす。そう、うさぎだ。 あの、何を考えているのか分からない眼差し。奇声。それでいて異常に高い身体能力と、何を食べても最高に美味そうに見せるあの表情...。
「……うさぎ、可愛すぎじゃない?」
どちらからともなく漏れたその一言で、僕たちの「うさぎ推し」生活が始まった。かつての同僚たちが今の僕を見たら、間違いなく椅子から転げ落ちて爆笑するだろう。「あの坂井さんが? ちいかわ? うさぎ? 冗談はやめてくれw」と。いいさ、なんとでも言ってくれ。
ちいかわを追うためだけに
熱量は加速し、アニメだけでは飽き足らなくなった。X(旧Twitter)でナガノ先生が漫画を更新するたびに、リアルタイムでその動向を追いかけたい衝動に駆られたのだ。
僕はもともと、SNSの不毛なやりとり、あの喧騒や殺伐とした空気が苦手だ。それなのに。あんなに頑なに拒んでいたアカウントを、40代のおじさんがうさぎのために作ってしまった。すべては、プルャの最新情報を最速で手に入れるために。
今の悩みは、うさぎグッズが部屋の景観を少しずつ侵食していることだ。でも、あの美味そうに飯を食う姿を見るたびに、僕の荒んだ心は救われている。
さて、今日もまた漫画の更新を待つとしよう。……うさぎグッズの交換、承ります。
